俳優の阿部寛さんの公式ホームページをご存じでしょうか。2000年代初めから、ほとんど同じ作りのまま公開され続けているサイトです(公式サイトはこちら。本物を先に開いてから読むと、話が早いです)。
左に細いメニュー、右に本文。白い背景に青いリンク。写真が1枚と、出演作の一覧。装飾らしい装飾はありません。見た目だけなら「古い」の一言で片づけられそうです。
ところがこのサイトは、何年かに一度、SNSで必ず話題になります。しかも、笑いのネタとしてだけではなく、「日本でいちばん速いホームページ」として、です。
ホームページを作る仕事をしている立場から、よく検索されている3つの疑問に、順番に答えます。
なぜ、あんなに速いのか
理由は単純で、送っているデータが、ほとんど文字だけだからです。
ふつうのホームページは、開いた瞬間に裏でたくさんのものを読み込んでいます。大きな写真、動きをつけるためのプログラム、アクセスを数える仕組み、広告、SNSのボタン。1ページで、文字の何百倍もの量になることも珍しくありません。読み込み中の白い画面や、くるくる回るマークは、それを待っている時間です。
阿部寛さんのサイトには、そのどれも入っていません。文字と、小さな写真が1枚。だから、電波の弱い場所でも、古いスマホでも、速度制限中の回線でも、押した瞬間に全部出ます。
速さの秘密は、特別な技術ではなく、「余計なものを足していない」ことです。
何がすごいのか(速さ以外に)
落ちない
話題になってアクセスが集中しても、表示が遅くなったという話を聞きません。凝った仕組みがないので、壊れるところがないのです。
迷わない
出演情報を知りたい人は「ドラマ出演」を押せば一覧が出ます。それだけです。おしゃれなサイトでよくある「どこを押せばいいか分からない」「スクロールしても本題が出てこない」がありません。
古くならない
流行のデザインは数年で古くなり、作り直しが要ります。このサイトは流行に乗っていないので、古くなりようがありません。20年以上、同じ形で現役です。これは、作る側から見ると、相当すごいことです。
ネタにされているのに、なぜ消えないのか
「阿部寛のホームページ」は、笑いのネタとして広まりました。それなのに、作り直されることなく、同じ姿で残っています。
理由は、役目を果たしているからだと思います。出演情報を知りたい人が、迷わず、一瞬で、知りたいことにたどり着ける。ホームページに求められていることを、全部やっています。見た目が古いという理由だけで、ちゃんと働いているものを作り直す必要は、どこにもありません。
ネタにされるたびに、人が見に来て、「あれ、たしかに速い」「たしかに見やすい」と言って帰っていく。笑われるのではなく、笑われながら、勝っているサイトです。
小さなお店に、何が応用できるか
阿部寛さんのサイトが教えてくれるのは、「ホームページに本当に必要なものは少ない」ということです。
お店を探している人が知りたいのは、何のお店か、どこにあるか、いつ開いているか、いくらか、どう連絡するか。この5つです。写真が数枚あれば十分で、動く演出や、スクロールで現れる仕掛けは、知りたいことの邪魔になることすらあります。
そして、速さは親切です。電波の悪い駅のホームで、信号待ちの数秒で、お店の情報を確かめたい人がいます。一瞬で開くページは、それだけで選ばれる理由になります。
爆速プランは、これを真面目にやったもの
KJ products の爆速プランは、この「余計なものを足さない」作りを、小さなお店向けに真面目にやり直したものです。
| 内容 | |
|---|---|
| 見た目 | 白い背景、青いリンク、左にメニュー。素のHTMLそのまま |
| ページ | トップ、お店について、メニュー・料金、営業時間・地図、お問い合わせの5ページ |
| 速さ | 全ページ合わせて写真込みで数十KB。一瞬で開きます |
| スマホ | 画面に合わせて並び替わり、電話番号はタップで発信 |
| 料金 | 初期費用0円、月額1,980円。住所は無料の住所(○○.pages.dev のような形) |
| 公開まで | アンケートの回答から最短3営業日 |
付かないものも、はっきりしています。お店の名前の住所(○○.com)、お問い合わせフォーム、独自メールアドレス、お知らせ欄、デザインの選択。これらは「ちゃんとした見た目のホームページ」が欲しくなったときに、ライトプランへ移れば足ります。
ちなみに「ネタになる」ことも、小さなお店にとっては悪くありません。「うちのホームページ、2000年代式なんです」は、名刺交換のときの、わりといい話題になります。
この記事を書いたのは、横浜でホームページを作っている KJ products です。Instagram と YouTube では、ケイとジェイ(K と J)という二人の、1分の会話劇を毎日出しています。ホームページの話は、ほとんど出てきません。
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